Dr.K私的意見書

                                                     
神戸地方裁判所尼崎支部 平成12年(ワ)第953号損害賠償請求事件
原告 山下 秀樹・外1名
被告 那賀郡町村共同国保那賀病院経営事務組合・外1名
上記損害賠償事件に関し、原告側代理人S弁護士により依頼された質問事項に対して下記の様に回答いたします。     
2003年4月18日
社会福祉法人○○○○
○○○○新生児科
K・K

質問事項1.
 死産とはどのように定義されているか。
                                             

回答
 わが国では「死産」とは厚生労働省令「死産の届出に関する規定」で「妊娠満12週以降における死児の出産をいう」とされている。「死児」についてWHOは「妊娠期間に関係なく、母体から受胎による生成物が完全に排出または娩出される前に死亡した場合で、この死亡とは、母体からの分離後、胎児は呼吸しないか、あうりは心拍動、臍帯拍動、随意筋の明らかな運動などの、生命の証拠のいずれをも示さない事実をいう。」と定義している。
 実際の現場においては、娩出された児に対して、気管内挿管や薬物投与などの蘇生措置を行っても心拍動や自発呼吸などが全く認められない場合「死産」と扱っている。
 娩出後に蘇生処置をどの程度の時間を行なうかに関しては、医療機関や個々のケースによっても一概に決められないが、通常は20〜30分間の蘇生処置にもかかわらず全く生命兆候が認められない場合には蘇生処置を中止する場合が多い。

質問事項2.
 乙3号証第5頁の経過を見てこの児は死産と認められるか判断いただきたい。

回答
 乙3号証第5頁の記録によれば、児には蘇生開始20分後に心電図上に心臓の活動を示す波形が出現し数分間継続していると記録されている。前項に述べた死産の定義によれば、本件は死産には定期に当てはまらない。また、結果的には数分で再度心停止に至ったとはいえ、実際に蘇生術を行なっている段階においては、拍動し始めた心拍がいつまで続くのか、それとも、すぐに停止してしまうのかは判断できないため、心拍動が再開された以上、児は生存の可能性があるものとして蘇生を継続すると判断するのが一般的である。事実、本件でも蘇生を行なっていた担当医師も死亡確認時間を最終的に16時38分としていることは、それまでは生存の可能性を考慮して蘇生術を継続すると判断していた事をあらわすものである。

質問事項3.
 乙第31号証は、乙3号証第5頁の記載者が報告したものであるが、これを読んでどうのような意見をもつか。特に、児が死産していたという証拠となるものであるか。

回答
 乙第31号証で、実際に蘇生を担当し児の死亡を確認したY医師は「出産直後の状況からは、ほとんど『死産』といえる状態でした。」としながらも、続けて「蘇生開始約20分後に心電図モニター上認められた波形は、必ずしも児固有の心電図波形とは断定できないが、心電図モニター上ごくわずかな時間ではあるが、児の心臓からの電気刺激が確認できたと判断し、出生後死亡とし死亡診断書を作成しました。」と述べている。
 Y医師の経過報告を読めば、同医師は本件ベビーが蘇生に反応したと判断していることは明らかであり、それ故に、同医師は死産とせず16時38分に死亡確認を行ない、死亡診断書を作成したものと考える。現場に立ちあい、蘇生を行なった医師がそう判断している事に加えて、それを否定する特段の材料がない以上、乙第31号証が本件ベビーの死産を証明していると考えることはできない。

                                                   以上