裁判記録(文書提出命令申立事件意見書)

別紙(2)

平成13年(ラ)第714号 文書提出命令申立却下決定に対する抗告事件

 

意 見 書


       抗告人(原審原告) 山 下 秀 樹 外1名
       相手方(原審被告) 那賀郡町村共同国保那賀病院経営事務組合 外1名


平成13年8月22日


         上記相手方(原審被告)ら訴訟代理人
              弁護士  ○ ○ ○ ○

大阪高等裁判所 第10民事部 御中

一、抗告状(平成13年6月22日)に対する意見・反論 

1.まず、「当事者が訴訟において引用した文書を自ら所持するとき」(民訴法220条
号)とは「当事書が自ら引用した文書を所持することとにより提出義務を負う場合」(名古
屋高決昭和52年2月3日高民集30一1ー1)であり、相手方の所持する文書は相手方が
原審において自ら引用した文書ではないから、これに該らない。けだし、旧「民訴法31
1条1号で当事者がみずから引用した文書について提出義務を認めたのは、もっばら訴訟
において当事者は実質的に平等であらねばならないという基本的要請に基づくものであり
、当事者が訴訟においてその所持する文書をみずから引用して自己の主張の根拠としなが
ら、秘密の保持を要請されているからといってその提出を拒否するのは当該訴訟における
相手方、本件について言えば抗告人の防御権を侵害するばかりでなく、訴訟における信義
誠実の原則に反し、文書を引用してなした相手方の主張が真実であるとの心証を一方的に
形成せしめ適正な裁判を誤らしめる危険さえ包蔵しているのでこれを抗告人の批判にさら
すことが採証法則上公正であると考えられる」(同判決理由)とされてからであり、相手
方当事者の引用する文書の提出義務までも広く認める趣旨ではないからである。抗告人は
この点を誤解している。

2、次に、抗告人の主張する「本件分娩事故以降に被告病院が作成した被告病院内部でのプ
ロスタルそンEの使用マニュアル」の作成は、本件分娩事故を契機ないし原因として作成
されたものではない。医療事故が社会問題化して、産科を含む種々の診療科において、看
護職員等への各種マニュアルが作成されているという一般的な時勢の中で作成されたもの
であり、その作成時期が本件分分娩事故以降であったというものである。
 平成13年8月4日15時頃、相手方病院の小林産婦人科医師の外来予約診療中に抗告人が
予約なく来院し、「入院費請求に納得できない点がある」とのことで外来予約診療を一時
中断して面談した。抗告人が「分娩介助料の自費請求に不満がある」とのことであったの
で、「異常分娩において分娩介助料が保険給付の対象でない」ことを説明した。その話の 
中で、同医師はI「陣痛誘発剤の使用マニュアルの作成を検討中である」との話はしたが、
抗告人が主張するような「本件事故をきっかけにプロスタルモンEの使用規程を作成した
と明言した」(原審原告作成の文書提出命令申立書第4項)ことは決してないし、そもそ
もそのような作成経緯もない。 
 従って、抗告人の主張する如く、本件陣痛促進剤使用マニュアルが、本件事故当時に相
手方病院が行うべきであった医療水準や反省点を立証するべき重要な証拠となるべきもの
でもない。また、本件事故が相手方病院の将来の診療に際して何らかの教訓事例となった
としても、そのことと本件事故における相手方病院の過失の存否を判断することとは次元
や局面が全く異なるものであり、この点の抗告人の主張も俄に理解し難いものである。

3.また、相手方病院の作成した陣痛促進剤の使用マニュアルは看護職員のために作成され
たもので、一般の患者・家族を含めて、相手方病院内部の関係者以外の者が見ることを前
庭(ママ)に作成させた書面では決してない。従って、本件陣痛促進剤使用マニュアルは、一般の
薬剤使用マニュアルと同様に、相手方病院職員の薬務が円滑・安全に遂行しうるように作
成された、言わば「内部文書(自己使用文書)」であることも明白であり、民訴法220
条4号ハにいう「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に該当する。

4.また、そもそも、抗告人の主張する「本件分娩事故以降に被告病院が作成した被告病院
内部でのプロスタルモンEの使用マニュアル」は、「本件訴訟の事実経過を基礎付ける事
実経過当時に存在しなかった文書」であることは明白である。抗告人は、「上記文書こ記 
載されたマニュアルの内答を比較検討することで被告の本件事故における過失を立証する
極めて重要な間接事実となる。」と主張するが、「比較対象されるべきは、本件事故当時
のプロスタルモンEの使用時の医療水準」であり、上記マニュアルでは決してない筈であ
る。

5.さらに、相手方病院は「那賀郡町村共同国保那賀病院経営事務組合」が管理する病院で
あり、所謂「地方自治法第284条1項の規定による一部事務組合」であり、相手方病院
職員の身分は「地方公務員」である。従って、上記文書は、民訴法220条4号本文括弧
書きにいう「公務員がその職務に関し保管し、または所持する文書」にも該当する(なお
、自治体等の保管する診療録は、その保管、所持形態は医療法の規制を受ける外に、公文
書としての性質に基づく規制も当然に受けるもので、私立病院の作成する診療録とは畏な
る面があり、この点ほ文書提出命令においても当然に考慮されるべき事項である)。

6.実質的にも・本件のような抗告人の申立を認容するごとは、請求原因事実に直接関連し
ない病院の内部文書の一般的堤出義務を認める危険性があり、民訴法220条第4項ハ規
程の趣旨を没却する結果となる。

7.よって、原審の文書提出命令申立却下決定は正当であり、本件抗告は直ちに却下される
べきである。