裁判記録(被告第5準備書面)

以下は、2003年4月22、被告側代理人より提出された準備書面である。

※できる限り原文通りの記述に従ったが、機種依存文字の丸付き数字は丸なし数字に、固有名詞は必要に応じてイニシャルとした。

 


 

第1、本件原告山下睦子の胎児である山下留美奈(原文ママ)(以下、睦子ベビーという)は死産であったこと

一、死産の定義

1・死産とは、「妊娠満12週以降における死児の産出をいう」(厚生省令「死産の届出に関する規程」)。死児、則ち、「胎児死亡とは、妊娠期間に関係なく、母体から受胎による生成物が完全に排出または娩出される前に死亡した場合で、この死亡とは、母体からの分離後、胎児は呼吸しないか、あるいは心拍動、臍帯拍動、随意筋の明らかな運動などの生命の証拠のいずれをも示さない事実をいう。」(WHOの定義)(乙36:800p)。また、「死産とは、出生後において心臓拍動、随意筋の運動及び呼吸のいずれをも認めないものをいう」(乙45号証「標準産婦人科学第2版:496p)

2.死産か新生児死亡否かの区別の基準は、母体からの分離時(分娩時)及び分娩後に、胎児が生命の証拠を示したか否かにより、具体的には@胎児の呼吸、A胎児の心拍動、B胎児の随意筋の運動のいずれも認めない場合は死産であり、他方、そのうちの1つ以上を認めたが死亡した場合は新生児死亡であることになる。

二、本件での分娩前後の状況

答弁書31p〜37pで詳述したが、尋問結果(被告F医師、証人M助産師)を踏まえて、胎児の心音の状態を詳述する。

1.分娩直前の状況

(1).M助産師のドップラー検査結果
15時頃、M助産師は、分娩監視装置を装着するために、ドップラー胎児心拍検出器で胎児音を確認したところ、児心音(心拍数)は聴取困難で、かつ、50〜60回/分前後の途切れ途切れの高度徐脈の持続が認められ、処置中も回復しなかった(M調書4p〜5p、乙2:29)。
*注1:高度徐脈持続の意義(乙32:420p)
1)「徐脈は90〜109bpm(回/分)を軽度徐脈、89bpm(回/分)以下を高度徐脈としている(表17-9)」(同P左上段)。

2)「頻脈、徐脈はともに少なくとも10分間異常持続するものをいう」 (同p左下段A徐脈欄)。

3)「子宮内胎児死亡直前の高度の胎児低酸素症の場合、徐脈が認められ、徐脈は胎児仮死に陥っている可能性が強い所見である」とされる(同 p下段A徐脈欄)。

4)よって、本件における徐脈(50bpm未満)は、高度徐脈に該当し、15時頃から回復しなかったこと、出生後のアプガースコアO点が持続したことなどの経過に照らせば、「子宮内胎児死亡直前の高度の胎児低酸素症の場合に出現する徐脈」であったと推認される。

(2).CTG記録(14時57分〜15時21分)
@.14時57分〜15時21分(約20分問)の問の分娩監視装置検査(記 2/35 録できる最低心拍数は50回/分)結果による胎児心拍数は、概ね言十測が不能な程度の心拍消失〜高度の徐脈の状態(O回/分〜50回/分未満)であった(乙2:17pCTG別紙)。

A.但し、
@)15時3分〜同4分頃に約20秒と約30秒の50〜60回/分の児心拍らしき徐脈が、また、15時16分頃に約20秒の50〜55回/分の児心拍らしき徐脈が記録されているが(CTG用紙の94574番の下の欄付近)、これは、ドップラー心音検出器で一時的に約60回/分の徐脈が確認されたときの記録である可能性が高いが、偶然に母体の心拍数をとらえた記録である可能性もある(被告F調書4p,20p,21p)。
A)また、15時13分頃に約5秒以下の125〜130回/分の記録と約2〜3秒の130〜133回/分の記録(CTG用紙の94577番の後ろ付近)、記録用紙全般にわたる点状の印字(CTG用紙の94572番〜94573番〜94574番〜94575番〜94576番〜94577番〜94578番〜94579番〜94580番)があるが、これらが児心音をとらえた記録である可能性はOではないが、極めて低い(被告F調書21P)。なぜなら、M助産師によるドップラー児検出検査にて児心音聴取がほとんど不能な状態で、点状であれ、上記記録全般にわたり140〜160前後の児心拍があったとは考えにくいし、また、このCTG記録の初めには、他患者のCTG残存記録がたまたま結合されているところ(「5/2615:OO頃」の記入の前の部分、被告F調書19p)このなかで児心拍数を示すグラフとは明らかに別個に点状の印字が90回/分前後部分に1個、160〜170回/分部分に2個から3個印字されており、これらの点状の印字は児心拍数を表すものではなく単なる機械による記録上の汚れやアーチファクト(誤記)などと考えられるからである。

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