以下は、2003年4月22、被告側代理人より提出された準備書面である。
※できる限り原文通りの記述に従ったが、機種依存文字の丸付き数字は丸なし数字に、固有名詞は必要に応じてイニシャルとした。
第5、最後に
1・本件は、正常児の出産を望む原告ら両親に対して、その期待に応えるべく、前期破水後の微弱陣痛と時間経過に推移の中で、遷延分娩による子宮内感染のリスクを回避する目的から、まず、母児への悪影響の少ない頸管熟化作用を有する経口子収縮剤であるプロスタルモンE錠の経口投与を開始し、6錠目の投与終了後の13時15分から15時頃までの間に胎児に急変が起こり子宮内胎児死亡に至った事案である。
2・この約1時問45分の曲に何が起こったのかは、剖検が実施されなかったために、その正確な原因は不明とせざるを得ない。しかし、真の原因解明には剖検が不可欠であったことに照らせば、その原因不明による不利益をこの間にCTGや妊婦の直接の観察などを怠った被告F医師や担当助産師に負わせることが公平な損害賠償責任のあり方とは到底思えない。
3・点滴静注による場合は別として、過失論の前提としての「経口」プロスタルモンE錠投与時に、いつの時点でCTG監視を行うべきなのか、あるいは、原告主張のように連続的なCTG監視を必要とするか否かに関する医療水準も現在まで明確化されているとはいえいない。
4・さらに、本件を胎児死亡とみるか、出生後死亡とみるかによって、損害賠償論としても大きな差が出る事案である。
5・医療機関として本件が子宮収縮剤の副作用として起こった事故であれば、このような事案を教訓として、早期に子宮収縮剤の副作用を発見してできる限りの処置を行うために、「経口」プロスタルモンE錠投与中は連続的なCTG監視を実施するように努めるべきことになるが、他方、前期破水の状態では、子宮収縮剤の副作用とは無関係に予期できない突然の臍帯脱出が起こることも知られており、本件が前期破水を原因とする臍帯脱出による胎児の急死であれば子宮収縮剤投与との関係は遮断される。その場合の教訓は、いきおい前期破水のみでなく、それ以外の数多く臍帯脱出のリスクファクターが1つでも存在すれば常にCTGによる連続的監視をなされるべきものとなるが、現実的でないし、また、実際そのような警告は一般になされていない。このように本件事案はその原因をどうみるかによって、今後の医療の対応方法にも大きな相違を産む可能性がある。
*注1:臍帯下垂・脱出の危険性の高い場合の管理方針「臍帯下垂・脱出の起こる危険性の高いものを表17-13にあげる。臍帯脱出は突然起こり、対処も緊急を要するため、以上のようなリスクの高い妊婦には、あらかじめ超音波で胎盤や臍帯の位置などを調べておき、羊水過多症や臍帯下垂の見られる妊婦は分娩前に入院させて管理したほうがよい」(乙32:424p右上段・表17-13)とされるがCTGによる連続監視の必要性は説かれていない。
6.さらに、本件が提訴されて以来、原告らは2001年(平成13年)7月20日付フライデイヘの「薬の安易な投与で死産」30歳の母親が怒りの裁判という表題で実名(「公立那賀病院」、「H・F医師」)で報道し、また、「ルーちゃん(留美奈(原文ママ))からのメッセージ」というホームページ(http://rumina.cside4.com/index.htm1)で訴訟資料(答弁書等)を連載した。これらにより被告Fはもとより、担当助産師など被告病院関係者は相当の精神的負担を強いられたと被告ら代理人は聞いている。
7.なお、原告らは、K助産師の証人調書31〜32pでのドプラー心音検出器による遅発一過性徐脈の所見に関する証言を偽証或いは遅発一過性徐脈について正しい知識を有しないことになると主張するが(原告第5準備書面11p)、K助産師の同証言の趣旨は「陣痛発作が来ている間」に、則ち「陣痛と陣痛発作時じゃないところで、おくれて」、「その聞いている間に、心音が落ちればがわかると思います」と証言したものであり、これはCTGによる正確な陣痛と胎児心拍曲線の関係評価による診断の問題としてではなく、ドップラ心音検出器による検査時の遅発一過性徐脈の推定という意味で証言されたことは前後の脈絡上明らかであり、また、当時のK助産師のドップラ心音検出器による知識や経験に基づいた証言であり、なんら偽証でないし、また、遅発一過性徐脈について正しい知識を有しなかったことによるものではない。
8.以上、本件事案を医学的知見の是非を含めて十分にご検討いただき、具体的な事実経過を踏まえた事案に即した公平中立な観点からの判決を求める次第である。
以上。